■本:夕凪の街桜の国(小説)
著者: 国井桂 /こうのふみよ
出版社: 双葉社
サイズ: 単行本
ページ数: 175p
発行年月: 2007年07月
この夏、映画化されてかなり話題になったので
ご覧になった方も多いと思うが
「夕凪の街 桜の国」
広島の被爆者とその家族、周りを取り巻く人々を三世代にわたって描いている
原作は、こうのふみよ さんの 漫画だ。
その「夕凪の街 桜の国」の映画化の脚本を友人の
国井桂さんが担当され、ノベライズの小説も出た。
私は、こうのふみよさんの原作を読んでなかったので、
まず、映画 → ノベライズ → 原作の漫画 という順番で読んだのだが、
驚いたのは 国井桂さんのノベライズ
絹のように繊細な表現で情景描写、そして、人々の心情を描いている。
あまりにいい言葉がいっぱい出てきたので、
これは原作にも出ているものなのか?と、それから
こうのふみよさんの原作を読んでみたのだが、
これも驚いた。
なんて、短い。
120ページにも満たない。
それなのに、淡々と、でも、優しく、力強く、主人公や登場人物を暖かく描いている。
今までの悲惨なだけを強調する事が多かった原爆ものとは一線を化している。
漫画の中に出てくる言葉もとても少ない。
この少ないページで、深い、でも淡々と、
それでいて人々の心の琴線にふれる
作品を描ている。すごい。
そして、また、
国井さんが小説で書かれた描写の数々は
国井さんがこのこうのさんの描かれたページから感性でひろいあげ
言葉にしたものだということもわかった。
これもすごい。
今の世の中は、情報があふれかえり、
みんな、表に出ているものだけでしか、
判断しなくなっているように思う。
次から次へと、目の前に情報が提供されるので、
深く掘り下げて考える時間などとれないのだろう。
結果、「見た目主義」 や 「数値化」 といった
言葉がもてはやされる。
考える力を失っていく。
私は、世の中は、きっとこのままではすまないと思う。
バブルの時代、世の中の大半の人がバブル(直にはじける)を
実感できてなかったように
今の人々は、情報社会バブルにうかれていると思う。
バブルがはじけたように、今後、
表に出ている情報だけでは、生きていけなくなる時代がきっとくる。
その時にいかに物事の本質を深く見つめることができる能力を持っているか?
ということが鍵になるだろう。
例えが大仰になってしまったが、
そんな意味でも
「夕凪の街桜の国」
原作、ノベライズとも、是非、機会があれば
読んでいただきたいと思います。
私が、いま、ここで書いたようなこと全部抜きにしても
本当に 「感動」 します。
映画も近々、DVDがでるでしょう。